カテゴリ: 季節・行事
冬しずもり、香り兆して
冬成る刻、空は塞がれて
暦の上で、十二月初旬のこの時期は「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」と呼ばれます。
空を覆う厚い雲、ひそやかに眠りにつく生き物たち、音を吸いこむような寒さ──冬の気配が世界を包み込むころです。
七十二候のひとつとして、季節がゆるやかに冬へと沈んでいくことを知らせてくれます。
二十四節気「大雪」の初候にあたり、天地の気が塞がれ、本格的な冬の入口に立つ頃です。
「閉塞」という言葉は、雲が空を塞ぐさまを表す一方で、「塞(とりで)」の字に見られるように、寒さから身を守る静かな優しさも宿しています。
冬の初雪は、ただの白い結晶ではありません。古くから瑞兆の象徴とされ、豊作や幸運を予感させる神聖な存在でもありました。
雪が降るたびに世界は清められ、新たな巡りを迎える準備をしているかのようです。
閉塞成冬のころ、白い雪は希望の布となり、心に静かなぬくもりを残していきます。
白に寄せる暮らし
朝の霜が陽を受けてきらめき、落ち葉がひそやかに舞い落ちる冬の朝。
重たい雲の切れ間から差す光は、冷えた空気をやわらかく照らし、日常を少しだけ穏やかにしてくれます。
雪の日には、白く覆われた景色が心を浄化し、あたり一面が掃き清められたような静けさ。
そんな季節だからこそ、冬支度を整え、湯気の立つお茶とともに和菓子を味わう時間が、何よりの贅沢になります。
寒さに耐え、静かに香り立つ冬の果実。その折に思い浮かぶのが、柚子です。
冬しずもるとき、柚子ひらく
凍てつく空気の中でも、柚子は鮮やかな色を宿し、澄んだ香りを放ちます。
閉塞成冬の「閉ざす」気配の中で、ふと差し込む香りの光──それが柚子の存在です。
柚子の羊羹は、寒さに身を委ねるこの時期にこそ似合う菓子。
凍える季に寄り添うように固めた羊羹は、ほのかな酸味と清澄な香りを備え、冬の空気と調和する味わいを生みます。
口に含むと、まず羊羹のやさしい甘みが広がり、その後から柚子の香りがすっと立ち上がる。
それは、厚い雲の向こうに確かに季節が巡っていることを思い出させてくれる、冬ならではの余韻です。
外が静まり返る閉塞成冬の日。
お茶とともに柚子の羊羹をいただく時間は、冬を味わい、春を待つための、ささやかな祈りのようなひとときなのかもしれません。