和菓子小径こみち
白地に緑の松、淡い黄色の月をあしらった落雁『松韻舞月』
松韻舞月 ― 秋の情景を映す落雁

長夜の宵 ― しずけき夜に

秋の夜長、静かな月が空にのぼり、白と緑、淡い黄の調和が静けさの中に温もりを宿します。

季節が深まるにつれて、心もまたしずかに内へと向かうようです。そんな時間に寄り添うように、この「松韻舞月」は生まれました。

秋の落雁に映す、静寂のかたち

松は常緑として、冬を越えても色を失わず、長寿や不変の象徴とされてきました。

その背後にのぞく月は、満ち欠けを繰り返しながらも夜空に戻ってくる――循環と再生のしるしです。

白地に緑の松を浮かべ、やわらかな黄色の月を重ねた落雁は、「変わらぬもの」と「うつろうもの」の調和を表しています。

松の幹や月の色には、ほんのわずかに赤を添えています。

その一滴が、黄に深みを、緑に温もりを与え、秋の息づかいを映すような穏やかな色合いに仕上がります。

職人の手で生地のきめ、色の濃淡、光の加減まで慎重に整え、一枚の情景が形を得ます。

和菓子には古くから月を題材にしたものが多く見られます。

日本では、季節の行事として月を愛でる風習があり、中秋の名月には月見団子や月を模した落雁などが作られてきました。

月はただの形としてではなく、「清浄」「無常」「再生」「雅」といった象徴的な意味を持ち、和菓子の中に取り入れられています。

こうして生まれた月を表す落雁は、秋の夜空や静けさ、自然の移ろいを感じさせる一品となっています。

松韻舞月 ― 雅と秋の祝意を込めて

「松韻舞月(しょういん むげつ)」は、松の響きと月の光が溶け合う一瞬をかたちにした落雁です。

松の節々に宿る静かな音(ね)と、月下に舞う光のゆらぎ――。

その儚い気配を、やわらかな甘味とともに映しとりました。

秋の落雁として ― 和の美を映す情景

秋は自然の色が最も深くなる季節。

山々が紅に染まり、空が高く澄むころ、和菓子の色もまた静かに変化していきます。

そんな秋の情景を映したこの落雁は、口にふくむとさらりとほどけ、ほのかな甘さのあとに広がる香ばしさが秋の夜気を思わせます。

目で味わい、舌で感じ、心に残る――手仕事で生まれる落雁の美です。

手仕事が奏でる季節の音

松の緑は静けさを、月の黄色はやわらかな光を象徴しています。

そこに重ねた赤のひとしずくが、秋のぬくもりと生命の鼓動をそっと添えます。

彩りはあくまで象(かたち)をなぞるものですが、その奥には自然の記憶と季節の情緒が息づいています。

手のひらにのせたとき、そこに確かに「季節の気配」を感じられるでしょう。