和菓子小径こみち
上白糖に色をつけている様子
彩りを待つ落雁の素材

落雁に彩りを ― 命を宿す和の色

色彩が生み出す落雁の魅力

落雁は形だけでなく、色によっても豊かな表現が生まれます。

優しい桜色や爽やかな抹茶色、季節の彩りは、一粒ごとに命を吹き込み、見た目にも楽しさを添えます。

色彩が加わることで、味覚だけでなく視覚でも日本の四季や祝意を感じられるのが、落雁ならではの魅力です。

わがし京増の色素へのこだわり

「わがし京増」では、落雁の彩りを大切にし、表現したい季節や意匠に合わせて、さまざまな種類の色素を使い分けています。

多くの種類を用いることで豊かな色の奥行きを生み出していますが、ひとつひとつの使用量はごく控えめです。

ほんのわずかな分量の違いでも、まるでお菓子の表情が変わるように仕上がりが違って見えます。

すべての色素は小数点第2位まで計測できる計量器で正確に量り、使用前には分銅で点検するなど、細やかな管理を徹底しています。

こうして、安全性と美しさの両立を大切にした落雁づくりを心がけています。

色の組み合わせで広がる表現の奥行き

彩りのひとつひとつにも、細やかなこだわりと心が込められています。

同じ「菊の葉」でも、その表現によって用いる色は異なります。

たとえば、華やかな「菊華籠(きっかろう)」のような明るい葉を表現する場合には、抹茶と黄色を組み合わせて「苗色(なえいろ)」のような柔らかな若葉色を作り出します。

一方で、瑞々しく生命力を感じさせる葉を表現したいときには、抹茶・ピンク・青を掛け合わせ、「青白橡(あおしろつるばみ)」と呼ばれる落ち着いた深みのある色を生み出します。

このように、色の組み合わせひとつで印象は大きく変わり、落雁は単なるお菓子を超えた“表現の器”としての魅力を持ちます。

四季と心を映す伝統の色彩

さらに、落雁の彩りは単なる装飾ではなく、日本の四季や心の移ろいを映し出す重要な役割を担っています。

春には桜色や薄紅色が芽吹きの喜びを伝え、夏は若葉や水を思わせる涼やかな緑や青が涼感をもたらします。

秋には紅葉を映した橙や金色が実りの季節を表現し、冬には白や薄紫が静けさと祈りの心を映し出します。

こうした伝統的な色の使い方は、古くから「色に意味を託す」日本の感性と深く結びついており、落雁はその美意識をもっとも繊細なかたちで伝える存在といえます。

五感で味わう和菓子の中でも、視覚を通して四季や文化を感じ取れる点こそが、落雁ならではの大きな魅力なのです。

彩りが伝える和の心 ― まとめ

落雁に込められた彩りは、単なる美しさを超えて、日本人が大切にしてきた自然観や心の機微を今に伝えるものです。

一粒の中に四季の情景や祈りの想いを映すその姿は、まさに「和の心」をかたちにした菓子といえるでしょう。

次回は、落雁の味わいを支えるもう一つの重要な要素――中餡に用いる小豆についてご紹介します。