和菓子小径こみち
アメ横の豆問屋の店先に並ぶ小豆や乾物の商品棚
豆の表情が並ぶ、豆が語り合う店先。

天が紡ぐ物語 ― 光と雨が育む味

アメ横を巡る小さな旅

浅草からほど近いアメ横の一角には、豆や乾物を専門に扱う店が昔から軒を連ねています。

和菓子作りの糧として、小豆の「年ごとに変わる表情」を知るため、折に触れて現地を訪れ、目で見て手で触れながら情報を集めます。

光や空気、店先のざわめきに耳を澄ませると、豆が語る季節の声が胸に届きます。

卸の店先 — 見えない糸を手繰る

卸業者は、産地と作り手を静かにつなぐ存在です。

収穫の様子や保管の環境、粒のそろい具合や水分の微かな違い——日々丁寧に見極めながら、豆の状態を伝えてくれます。

商品の説明だけでなく、「今年はどんな表情か」「保存はどうか」といった生の声が、菓子作りの手がかりとなります。

同じ品種でも年ごとに変わる豆の個性を感じ取り、今年の様子や豆の状態を丁寧に伝えてくれる店先の存在が、毎年安定した味わいを支えます。

季節の風が運ぶ豆の声

小豆は、光や雨、風といった季節の変化を受けながら育ちます。

雨の多い年や猛暑の年には、粒の大きさや硬さ、風味に微妙な差が生まれます。一年ごとに移ろう豆の表情に寄り添いながら、煮方や火加減を微妙に調整し、安定した味わいを引き出します。

年ごとに煮方や火加減を調整することは、安定した味わいを生み出すために不可欠です。見て、触れて、耳を澄ませながら、豆の微かな声を感じ取り、次の点に意識を巡らせます。

粒の艶と揃い具合:艶のある粒は乾燥状態が良く、品質の良さを示す。

におい:異臭がなく、自然な香りであること。

乾燥度合い:過乾燥や湿気の残りがないかを確認。

破損粒の割合:多いと煮崩れしやすいため要注意。

店先で働く人々とのやり取りも大切です。保管の様子や入荷の声、今年の豆の微かな変化など、直接耳にする“生の声”が、豆の本当の姿を教えてくれます。

季節の風や雨のささやきに耳を傾け、豆のひと粒ひと粒の表情を感じながら、手仕事をひとつずつ丁寧に重ねます。

季節とともに表情を変える、豆は“生き物”

小豆は、年ごとに吸水の具合や火の通り方が微妙に変わります。大量に炊く前に、小さな鍋でその年の豆の様子を確かめ、時間や火加減を微妙に調整します。

「同じ豆は二度とない」。だからこそ、材料の声に耳を澄ませ、工程を少しずつ変えながら、菓子を最良の姿に仕上げます。小さな工夫の積み重ねが、菓子の仕上がりに自然に現れ、その先には、日々の仕入れを支える人々との会話があります。

信頼の糸を手繰り、季節や産地のささやきを共有してもらうことで、毎年、豆の個性を生かした安定した味わいを届けられます。こうして、豆と対話し、自然の移ろいを感じ取りながら、手仕事をひとつずつ丁寧に重ねていきます。