和菓子小径こみち
三色の花をかたどった落雁「花綴り」
三色の花がそよぐ落雁「花綴り」

風に咲き、光にほどける花綴り

花のかたちに宿る、やわらかな時間

やわらかな光が街を包み、空は少しずつ明るさを増していきます。冬の静けさがほどけ、季節は新しい景色へと歩みを進めます。

落雁「花綴り」は、光の色、陽だまりの色、やわらかな余韻の色を映した花をかたどった和菓子です。花のかたちに季節のやさしさを映し、光や風の移ろいの中で、景色に溶け込みながら静かに息づいています。

雷乃発声、季節が目を覚ますころ

三月末から四月初めにかけての七十二候は「雷乃発声」。冬のあいだ静かに眠っていた空がゆるやかに動きはじめ、遠くでかすかな雷の声が響きます。雷は季節の移ろいを告げる合図のように、大地と空をやわらかく結びます。

風にはわずかな湿り気が混ざり、土や草の香りが広がり、空や雲の色もゆっくりと明るさを増していく。芽はふくらみ、花はひとつずつ開き、季節は清明へ向かいながら確かな姿を現していきます。

澄みゆく光の中で、季節は清明へ

昼と夜の長さが等しくなる春分を過ぎると、光は日ごとに澄み、空はゆっくりと高く広がっていきます。風は軽やかに流れ、空気は少しずつ透明感を増していきます。

やがて訪れる二十四節気のひとつ「清明」は、万物が清らかに明るく見えるころ。空気は透き通り、花や草木の色は鮮やかさを増し、景色は整然と落ち着きを帯びます。季節は深まり、生命の気配がやわらかに広がっていきます。

三つの花が織りなす、やさしい色彩

花綴りの落雁は、白、黄色、赤紫の三つの花でやさしい彩りを表しています。白は澄んだ光のように寄り添い、黄色はぬくもりを灯します。赤紫は息づく命の気配を映します。

三色は互いに寄り添い、柔らかに響く調和の中で色を重ねる。心に残る、やわらかな余韻。

ひとつの和菓子に宿る、季節のうつろい

季節は、音もなく世界の色を変えていきます。風の香り、空の明るさ、花や草木の色が重なり合い、時間は柔らかく紡がれていきます。花綴りの落雁は、その移ろいを小さな形にして、手のひらの中に届けます。遠くで雷が声をあげ、やがて清らかな光が広がる瞬間、ゆっくりと味わっていただきたい季節の和菓子です。