和菓子小径こみち
大山千枚田の看板と棚田の風景
稲穂を連ねて、秋へ向かう棚田

穂を垂れる稲、秋へ

夏を越えて、稲穂は重く

夏の日差しを受けて育ってきた稲が、収穫の季節へ向かっています。

青々としていた稲も、夏の終わりには穂が重くなり、少しずつ色を変えていきます。田植えから幾月もかけて育った稲が、実りの時期を迎える頃です。

千葉県では、地域によって8月から9月にかけて稲刈りが始まります。全国的に見ると比較的早い地域もあり、夏の終わりにはすでに収穫を迎える田も見られます。

稲の実りを感じながら、鴨川市にある大山千枚田と二子棚田を訪ねました。

実りの頃を告げる、禾乃登

七十二候の「禾乃登(こくものすなわちみのる)」は、稲などの穀物が実る頃を表す言葉です。

「禾」は稲や粟、稗などの穀物を表す文字。穂が実り、収穫へ向かう時季を示しています。

七十二候では9月初旬頃にあたり、暦の上では秋が進み始める時期です。まだ暑さの残る季節ですが、稲の成長には夏から秋への移り変わりがはっきりと表れます。

春に植えられた稲は、夏の間に葉を伸ばし、穂をつけ、実を蓄えます。幾月にもわたる米づくりが、稲刈りという一つの節目へ近づいていきます。

「禾乃登」は、季節の移ろいとともに深まっていく穀物の実りを表した、秋らしい候のひとつです。

大山千枚田の稲田と稲穂の風景
大山千枚田 — 稲穂が描く秋の景色

山と海に抱かれた、房総の棚田

鴨川市には、地形を生かしてつくられた棚田がいくつもあります。

大山千枚田は、釜沼地区の斜面に広がる棚田です。大小の水田が段々に連なり、起伏のある土地に沿って独特の景観をつくっています。

平成11年には「日本の棚田百選」に選定され、平成14年には千葉県指定名勝となりました。現在も耕作が続けられ、棚田オーナー制度などを通じた保全活動も行われています。

そこから足を延ばして訪れた二子棚田も、房総の地形を生かした棚田の一つです。田の向こうには太平洋を望むことができ、里山と海が近くにある房総ならではの景観が広がります。

同じ鴨川市にある二つの棚田でも、周囲の地形や眺めにはそれぞれの特色があります。山の斜面に広がる大山千枚田と、海を望む二子棚田。土地のかたちが、そのまま景色の違いにつながっています。

二子棚田の稲田と海を望む風景
二子棚田 — 海を望む稲穂の季節

一枚一枚に残る、里山の記憶

棚田には、大小さまざまな田が、それぞれの形を保ちながら連なっています。

平坦な土地に大きな水田をつくるのとは違い、山の斜面や谷あいの地形に合わせて、一枚ずつ田を築いてきたためです。

そのため、同じ稲作の風景でも、場所によって見える景色が変わります。斜面の高低差、山の稜線、遠くに見える海など、土地そのものが棚田の姿をつくっています。

こうした場所で続いてきた米づくりには、稲を育てることだけでなく、その土地の地形を生かしながら農地を受け継いできた歴史も重なっています。

夏の緑に包まれていた景色も、収穫が近づけば少しずつ色合いを変えていきます。季節によって姿を変えることも、棚田を訪れる楽しみの一つです。

黄金の穂、秋を迎える

長かった夏も、少しずつ終わりへ向かっています。

強い日差しの中で育ってきた稲は穂を垂れ、季節は夏から秋へと移ろい始めています。

山の緑に囲まれた棚田にも、夏とは異なる風景が加わり、実りを迎えた稲穂が季節の変化を告げています。

「禾乃登」が巡る頃、季節の境目に立つ田園の景色。夏を越えた稲が実りとなり、秋の色へと変わりつつあります。