和菓子小径こみち
高家神社の鳥居と境内
鳥居の先に、料理の神様

手仕事の先に、願いを添えて

料理の神様を祀る、高家神社

南房総市千倉町にある高家神社(たかべじんじゃ)は、日本で唯一とされる料理の神様、磐鹿六雁命(いわかむつかりのみこと)を主祭神とする神社です。

天照大神と稲荷大神も併せて祀られ、料理人や調理に携わる人々をはじめ、食に関わる仕事をする人から信仰を集めてきました。

和菓子もまた、材料を選び、手を動かし、味や形を整えていく食の仕事のひとつです。今回は、南房総を訪れた際に高家神社へ足を運びました。

磐鹿六雁命から始まる料理の由緒

高家神社の主祭神である磐鹿六雁命は、『日本書紀』にもその名が記されている神様です。

景行天皇が安房の浮島の宮へ行幸された際、侍臣であった磐鹿六雁命が堅魚(かつお)と白蛤(はまぐり)を手に入れ、それを料理して天皇に差し上げたと伝えられています。その料理を大いに賞味された天皇は、磐鹿六雁命の技を厚く賞し、膳大伴部(かしわでのおおともべ)を賜ったとされています。

その後、子孫は代々宮中の食事を司ったとされ、磐鹿六雁命は料理の祖神として崇敬されるようになりました。

また、高家神社では料理だけでなく、醤油や味噌などの調味料に関わる神様としても信仰されています。食を支えるさまざまな仕事と結びついてきた神社であることがわかります。

高家神社の本殿
料理の神様を祀る社

庖丁式と、食に向き合うということ

高家神社で受け継がれている伝統のひとつに、庖丁式があります。

庖丁とまな箸を使い、食材に直接手を触れずに魚を調理する古式の儀式です。平安時代の宮中行事に由来する料理の作法で、現在も5月・10月・11月に高家神社で奉納されています。

毎月17日には庖丁供養祭も行われ、料理に携わる人々が道具への感謝を込めて供養します。

和菓子作りでも、型や包丁、へらなど、日々の仕事を支える道具があります。道具を使い、材料の状態を見ながら手を動かし、仕上がりを整えていく。その積み重ねが一つの商品につながります。

長く受け継がれてきた料理の技術に触れると、食に携わる仕事の奥深さを感じます。

高家神社の境内
夏の境内に、季節の気配

つくることと、願うこと

料理の神様を祀る高家神社を訪れたからといって、商売の結果を神様に委ねたいという気持ちはありません。

良いものを作り、お客様に選んでいただくためには、日々の仕事を積み重ねていくことが何より大切だと思っています。

思うような結果につながらなかったときには、何が足りなかったのかを考え、作り方を見直したり、新しいことを試したりする。そうした努力を続けた先に、少しずつ結果がついてくるものだと思います。

だからこそ、高家神社では大きな願いを託すというより、これからも食に携わる者として、丁寧な仕事を続けていけるよう手を合わせました。

料理の神様を前にして、自分がどのような仕事をしていきたいのか、心に思い描きながら――。