和菓子小径こみち
小豆餡で包んだ土用餅
暑き季を結ぶ甘み。

夏へ届ける、小豆の願い

土用餅とは?意味や由来、夏に食べる理由

土用餅(どようもち)は、夏の土用の時期に食べられる和菓子です。やわらかな餅を小豆餡で包んだ見た目は、おはぎに似ていますが、厳しい暑さの時季に健康を願って食べられてきた行事食です。

小豆の赤色には古くから邪気を払う力があると考えられ、暑気払いや魔除けの願いを込めて親しまれてきました。土用の丑の日にうなぎを食べる風習が広く知られていますが、土用餅もまた、夏の季節の節目に味わわれてきた伝統的な和菓子の一つです。

土用餅の名前の由来と歴史

「土用餅」という名前は、土用の期間に食べる餅であることに由来しています。

江戸時代には、宮中で土用入りの日に餅を食べる風習があったとされ、その習慣が次第に庶民へ広まったと伝えられています。現在では、土用の丑の日に合わせて販売する和菓子店も多く、夏を代表する行事菓子として親しまれています。

土用とは?一年に四回ある期間と夏の土用

土用は夏だけではなく、一年に四回あります。立春・立夏・立秋・立冬の直前、およそ十八日間がそれぞれ土用にあたり、季節の節目にあたる期間と考えられてきました。

その中でも最もよく知られているのが、立秋前の「夏の土用」です。厳しい暑さが続く頃でもあるため、昔から体調を整え、栄養のあるものを食べて健康を願う習わしが大切にされてきました。

土用餅とおはぎの違い

見た目はよく似ていますが、土用餅とおはぎでは食べる時期や込められた意味が異なります。

おはぎは春と秋のお彼岸に先祖へ供える和菓子として親しまれています。一方、土用餅は夏の土用に食べる行事食で、暑気払いと無病息災への願いが込められています。

どちらも餅と小豆餡を用いますが、それぞれ異なる年中行事と結び付いた、日本ならではの季節の和菓子です。

土用の風習と間日(まび)とは?

土用の期間は、土を司る神様である「土公神(どくじん)」が地上を治めると考えられてきました。そのため、土を動かす作業は控える風習があります。

庭の土いじりや井戸掘り、地鎮祭などのほか、引越しや新築を避ける風習があり、地域によっては結婚や開業など、新たな物事を始めることも控えるとされています。

一方で、「間日(まび)」と呼ばれる日は、土公神が天上へ出かけて不在になる日とされ、この日に限っては土を動かす作業を行っても差し支えないと伝えられています。

春夏秋冬の土用と食べ物の風習

四季それぞれに土用はありますが、「土用餅」として広く親しまれているのは夏の土用です。

一方、春・秋・冬の土用にも、それぞれの季節を健やかに過ごせるよう、縁起の良い食材を食べる風習があります。代表的なものとして、「い」が付くいわし・いも・いんげん、「う」が付く梅干し・うどん・瓜、「ひ」が付くひじき、「た」が付く玉ねぎ・大根などが挙げられます。

また、春は「青」、夏は「赤」、秋は「白」、冬は「黒」にちなんだ食材を取り入れる習わしもあります。地域や時代によって食材は異なりますが、季節を健やかに過ごそうとする知恵が、各地の食文化として今も息づいています。

土用餅に込められた願い

土用餅は、夏を元気に過ごしてほしいという願いと、先人たちの知恵が込められた和菓子です。

季節の節目を大切にしながら、昔から伝わる食の風習に触れることは、日本の四季や伝統文化を身近に感じる機会にもなります。土用餅は、夏の健やかな暮らしを願う心を今に伝える、季節を代表する和菓子の一つです。