和菓子小径こみち
精霊馬に用いるきゅうりとなす
ひと夏の再会を、やさしく結ぶ実り

精霊馬──想いを乗せて、故郷への道しるべ

精霊馬に託された、お盆の願い

お盆の時期になると、きゅうりやなすに割り箸や麻がらを差した「精霊馬(しょうりょううま)」を目にすることがあります。ご先祖様をお迎えし、お見送りするための乗り物に見立てられた、お盆を代表する風習の一つです。

精霊馬は一般的に、迎え盆の時期に盆棚や仏壇の近くへ飾られます。地域によって飾り方や呼び方には違いがありますが、多くの家庭で親しまれ、それぞれの土地の風習として今日まで伝えられています。

馬と牛、それぞれに込められた意味

きゅうりで作る馬には、「少しでも早く家へ帰って来ていただく」という願いが込められているといわれています。一方、なすで作る牛には、「お供えを載せて、ゆっくりとお帰りいただく」という意味が伝えられています。

精霊馬に夏の野菜が使われるのは、旬を迎える身近な作物を大切にする心とも関係しています。自然の恵みに感謝しながら、暮らしの中にあるものへ願いを託す、日本らしい風習の一つです。

精霊馬を飾る向き

精霊馬の向きには地域によってさまざまな伝え方がありますが、一般的には、迎え盆にはご先祖様を迎える意味から、馬を家の方向へ向ける考え方があります。ご先祖様をお迎えする願いが込められているためです。

送り盆には向きを反対にし、なすの牛でお帰りいただくという考え方もあります。ただし、飾る向きに共通した決まりがあるわけではなく、それぞれの地域やご家庭の風習に合わせて飾られています。

地域ごとに受け継がれる風習

精霊馬は全国共通のように思われがちですが、地域によって飾る数や順番、使用する材料などには違いがあります。昔は麻がらを足に用いることが一般的でしたが、現在では割り箸や竹串を使って作られることも多くなりました。

木工や陶器、ガラス細工などで作られた精霊馬を飾る家庭もあり、決まった形だけではなく、それぞれの暮らしに合わせた姿が見られます。身近な材料で手作りすることにも、家族の想いが込められています。

お盆に受け継がれる精霊馬

精霊馬は、大切な人を想う心を形にした、お盆ならではの風習です。きゅうりの馬となすの牛には、再会を願う気持ちや、感謝の想いが込められています。

飾り方や作り方は地域によって異なりますが、ご先祖様を敬う心は今も変わることなく受け継がれています。精霊馬は、お盆を象徴する風習の一つとして、多くの家庭で大切にされています。