カテゴリ: 文化・伝統
水無月の空の下、祈りをつなぐ
夏越の風に包まれて
梅雨の雲間から差す陽に、夏の気配が少しずつ色濃くなってまいりました。
青葉を渡る風には涼やかな香りが混じり、田畑の緑も日に日に深さを増してゆきます。
一年の折り返しを迎える六月の終わり。古くから人々は、半年の間に知らず知らず積もった穢れを祓い、残る半年の無事を願ってきました。
このたび、東国屈指の古社として知られる香取神社を訪れ、六月の大祓「夏越の祓」に触れてまいりました。
東国を護る香取神社
千葉県香取市に鎮座する香取神社は、全国に広がる香取神社の総本社です。
御祭神は経津主大神(ふつぬしのおおかみ)。古くより武運や国家鎮護の神として篤く信仰され、鹿島神宮とともに東国を守護する大社として崇敬を集めてきました。
その創建は神武天皇十八年とも伝えられ、長い歴史の中で人々の暮らしを見守り続けています。
深い杜に包まれた参道を歩くと、古社ならではの趣と長い歳月の流れが感じられます。
六月の大祓「夏越の祓」
六月三十日に行われる大祓は、「夏越(なごし)の祓」とも呼ばれています。
常に清らかな気持ちで日々を過ごせるよう、自らの心身の穢れや災厄の原因となる諸々の罪や過ちを祓い清め、残る半年の無事を願う神事です。
一年の折り返しにあたるこの時期は、これまでの日々を振り返り、新たな気持ちで後半の半年を迎える節目でもあります。
古くから受け継がれてきた祈りの形は、時代を越えて今も人々の暮らしの中に伝えられています。
茅の輪をくぐり無病息災を願う
夏越の祓では、茅(ちがや)で作られた大きな輪「茅の輪」が設けられます。
人々はこれをくぐることで災厄を祓い、無病息災を願ってきました。
古歌には、「水無月の夏越の祓する人は千歳の命延ぶというなり」と詠まれています。
六月に夏越の祓を行う人は、千歳にも及ぶ長寿を得るほど健やかに過ごせるという願いが込められた歌であり、家族の平安や日々の無事を願う人々の心は、今も昔も変わることがありません。
六月の和菓子「水無月」
夏越の祓にあわせて親しまれてきた和菓子に「水無月」があります。
白いういろうの上に小豆をのせた三角形の姿は、かつて暑気払いに用いられた氷を表しているともいわれています。
また、小豆には邪気を祓う力があると信じられ、六月三十日に水無月をいただく風習が今日まで受け継がれてきました。
季節の節目を大切にする思いは、こうした和菓子の中にも見ることができます。
半年の穢れを祓い、新たな季節へ
六月の終わりに迎える夏越の祓。
香取神社の杜を歩きながら、古くから続く祈りの心に触れる機会となりました。
これまでの日々に感謝し、残る半年の平穏を願う――。
節目を大切にする日本の美しい風習は、時代を超えて今も受け継がれています。