和菓子小径こみち
朱の実りと青紫の花が並ぶ落雁
左:紫星、右:朱実

雲間にこぼれる夏の兆し

梅雨の潤いと、夏の気配

紫陽花を濡らす雨が続き、景色がしっとりと潤いを帯びる頃。

空を覆う雲の切れ間から差し込むひと筋の光は、梅雨の深まりの中に、ひと足早い夏の兆しを感じさせます。

雨の静けさと、季節を押し進める光。そのふたつが交わる束の間の季節に、初夏の明るさがふと顔をのぞかせます。

朱実 ― 季節をつなぐ小さな実り

花の季節を見送り、枝先に結ばれるひと粒の朱。

雨に潤う景色の中で、その鮮やかな色は、雲の切れ間から差し込む光のようにふと目を引きます。

小さな実りの中に宿るのは、春の余韻と、これから深まる夏へと続く気配。季節をつなぐ束の間の明るさが、その朱に息づいています。

紫星 ― 夏を待つ空の花

雨を含んだ空気の中で、桔梗は空を映すような青紫を咲かせます。

星を思わせる端正な花姿は、賑わいの中で目を引くのではなく、季節の奥にある静かな美しさを湛えています。

深まる緑と重なるその色には、雨の余韻と、夏へ向かう空気が宿り、季節の流れを見つめるかのようです。

実りと花が語る季節

朱の実りが季節を前へと運び、青紫の花がその歩みに寄り添う。

春の余韻を抱く色と、夏の訪れを告げる色。ふたつがひとところに重なるとき、時間の流れが姿を現します。

明るさと静けさが交わるその境目には、束の間にしか見ることのできない季節の表情があります。

落雁は、見る工芸であり、口に含むことで完成する菓子。だからこそその意匠は、味わう前に、奥行きの中で季節の気配を立ち上がらせます。

夏を告げる小さな気配

雨の季節を越えようとする光と、深まりゆく緑。そのあわいに現れる束の間の景色を、ひとつの木型に映しました。

朱の実りと青紫の花。そのふたつが重なり合うことで、束の間の季節がひとつの景色として結ばれます。

ひと口ごとに、その束の間の景色を思い浮かべながら、移ろう季節の記憶をたどります。