和菓子小径こみち
人参・かぶ・竹の子をかたどった落雁
土に育まれた三つの恵み

大地のめぐみごと

梅雨の入り口にて

六月を迎え、野山の緑はいっそう深まりました。雨の気配をまとった風が吹き、畑では野菜たちが実りの時へと歩みを進めています。

木型に残されたのは、人参、かぶ、竹の子。雨を待ち、土に育まれた三つの命です。

いずれも季節の巡りとともに育まれてきた大地の恵み。古い木型を眺めていると、畑の景色や収穫を待つ人々の心までもが浮かび上がってくるようです。

大地から生まれる吉祥

春の雨が土を潤し、新たな命が顔を出す。

竹の子は空を目指し、かぶは丸く実り、人参は大地の奥へと根を伸ばします。

昔の人々は、こうした野菜の姿にも吉兆を見出しました。竹の子にはまっすぐ伸びる成長と立身出世を、かぶには豊かな実りや円満を、人参の赤には災いを遠ざける願いを重ねたといわれます。

その姿は、巡りゆく季節が織りなす豊かな営みそのもの。

そこには、実りを願い、収穫を喜ぶ人々の暮らしが広がります。

土を知る人参のかたち

木型に残された人参は、先端がわずかに二股へと分かれています。

真っ直ぐ伸びるだけでは辿り着けなかったのでしょうか。

石に出会えば道を変え、固い土にあたれば根を分ける。

その小さな曲がりや分かれ道には、大地を巡った歳月の跡が残されています。

刻まれた豊穣のかたち

竹の子は伸び、かぶは実り、人参は根を張る。

姿は異なれど、そのどれもが季節の巡りの中で育まれた命です。

人々はその姿に実りを願い、成長を願い、日々の暮らしの安らぎを願いました。

往時の木型に刻まれているのは野菜だけではありません。土とともに生き、季節とともに歩んだ人々の願いが、時を越えて伝わってきます。