和菓子小径こみち
翁面をかたどった落雁「寿々翁」
落雁「寿々翁」

刻の中に、祈りはひそむ

寿ぎのかたち、翁の面影

寿々翁は、祝ぎの場に現れる翁の面影を写した意匠。長き時を重ねた者にのみ宿る、やわらかな微笑と、尽きることのない寿ぎの気配をたたえています。

神にほど近い存在とされてきたその姿は、新たな年や節目に寄り添い、願いを結んできました。落雁というかたちに移すことで、ひとときにほどけゆく趣のうちに、時の重なりと祈りの余韻をとどめます。

神を戴く面、翁の由来

翁面は、能や狂言の演目「翁」において神を戴く面。天下泰平や五穀豊穣への祈りを宿し、舞台に現れるその姿は、単なる装いを越えた依り代として受け継がれてきました。

「翁」は物語を語るにとどまらず、祈りを現すためのかたち。古より伝わる作法と清めのもと、舞台はひととき神事の場となり、面を戴くことで、人はその祈りの中に身を置きます。

白き面影、翁のかたち

翁面には白色尉と黒色尉があり、いずれも穏やかな笑みと深い皺、長い髭をたたえています。顎が切り離された「切顎」の構えもまた、翁の姿として受け継がれてきたものです。

白色尉の姿に心を寄せ、その面影をかたちに移しました。その佇まいに触れる中で、日々の中にある安らぎや、穏やかな時の流れへと心が向かいます。

小鼓をかたどった落雁「囃子刻」
落雁「囃子刻」

音を宿す、鼓の一刻

囃子刻は、舞台に響く囃子の音と、その一打が生む間に心を留めた意匠です。音そのものではなく、刻まれる瞬間に立ちあらわれる気配をかたちに写しています。

鼓の一打は、ただ音を響かせるだけでなく、場の緊張や流れを導いてゆくものです。

とどまるかたちの中に、舞台の一瞬の響きと余白が宿ります。

手に受ける、鼓のひびき

小鼓は、能や歌舞伎の囃子において、手の内にひびきを受けとめる楽器です。肩に添えられ、指先の一打によって、張りつめた空気に音が立ちあらわれます。

そのひびきは一様ではなく、わずかな加減の違いによって表情を変え、舞台の呼吸や間と重なってゆきます。音はやがて消えながら、次の一打へとつながります。